相続放棄とは?まず知っておきたい基本

経営者や個人事業主の方が「相続」と聞くと、財産を受け取る話をイメージされるかもしれません。しかし相続では、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借入金や保証債務といったマイナスの財産(負債)も引き継がれます。ここで知っておきたいのが相続放棄という制度です。

相続放棄とは、亡くなった方(被相続人)のプラスの財産もマイナスの財産も、いっさい引き継がないという選択をする手続きです。家庭裁判所に申述(申し立て)をして認められると、その人ははじめから相続人ではなかったものとして扱われます。

台東区・上野の事業者にとって身近な話

台東区・上野エリアには、飲食・小売・建設など、家族や親族で事業を営むケースが多くあります。たとえば事業を営んでいた親御さんが亡くなったとき、事業用の借入金や取引先への債務、さらには連帯保証まで引き継ぐことになる可能性があります。財産より負債の方が明らかに多い場合などに、相続放棄が検討されます。

相続放棄はどんなときに使う?

相続放棄が選択肢になる代表的な場面は次のようなケースです。

  • 被相続人に多額の借入金があり、プラスの財産よりマイナスの財産が多いとき
  • 被相続人が第三者の連帯保証人になっていた可能性があるとき
  • 相続に関わりたくない、遺産分割のトラブルに巻き込まれたくないとき
  • 特定の相続人に財産を集中させたいとき(他の相続人が放棄する)

なお、財産と負債のどちらが多いか判断がつかない場合には、相続で得た財産の範囲内でのみ負債を引き継ぐ限定承認という制度もあります。ただし限定承認は相続人全員で行う必要があるなど手続きが複雑なため、実際には相続放棄が選ばれることが多くなっています。

選択肢 内容
単純承認 プラス・マイナスすべての財産を引き継ぐ
相続放棄 プラス・マイナスとも一切引き継がない
限定承認 得た財産の範囲内で負債を引き継ぐ(相続人全員で申述)

【最重要】期限は「3か月」 起算点に注意

相続放棄で最も注意すべきは期限です。相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述しなければなりません。この期間を熟慮期間と呼びます(民法第915条)。

ここで大切なのは、期限のスタート(起算点)が「亡くなった日」そのものではなく、「相続が始まったことを知った時」である点です。たとえば疎遠だった親族の死亡や借金の存在を後から知ったようなケースでは、知った時点から数えることになります。ただし判断が難しい場面も多いため、自己判断せず早めに専門家へ確認することをおすすめします。

この3か月という期間内に、財産と負債の全体像を把握し、放棄するかどうかを決める必要があります。時間はあるようで、実はあまり多くありません。

「単純承認」とみなされる行為に注意

相続放棄を検討している間に、相続財産を使ったり処分したりすると、財産を引き継ぐ意思があった(単純承認した)とみなされ、放棄できなくなるおそれがあります。事業を承継するかどうか迷っている段階では、財産の取り扱いに特に慎重になる必要があります。

相続放棄の手続きの流れ

  1. 被相続人の財産・負債の状況を調べる(預貯金・不動産・借入金・保証など)
  2. 相続放棄をするかどうかを判断する
  3. 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄の申述書」と必要書類(戸籍謄本など)を提出する
  4. 家庭裁判所からの照会に回答する
  5. 受理されると「相続放棄申述受理通知書」が届く

手続き自体は本人でも可能ですが、書類の収集や3か月という期限の管理、負債があるかどうかの調査には手間がかかります。特に事業を営んでいた方の相続では、財産・負債の全体像の把握が複雑になりがちです。

税理士
税理士のひとこと

上野エリアのご相談でも、「借金があるかもしれないが、はっきりしない」という不安をよく伺います。相続放棄をするかどうかは、財産と負債の全体像がわからないと判断できません。相続税の申告が必要かどうかとあわせて、まずは全体を整理することが第一歩です。3か月という期限があるので、迷っている段階でも早めにご相談いただくと安心です。

経営者・個人事業主が今できること

相続はいつ起こるか予測できませんが、事前の準備で選択肢を広げることができます。

  • 自社・自身の借入金や連帯保証の状況を、家族にも共有しておく
  • 事業用・個人用の財産と負債を一覧化しておく
  • いざというときの相談先(税理士・専門家)を決めておく

特に事業承継を考えている場合、相続税や生前対策とあわせて全体設計を行うことで、残されたご家族の負担を軽くできます。

出典

  • 民法(相続の承認及び放棄/第915条ほか)e-Gov法令検索
  • 裁判所「相続の放棄の申述」(裁判所ウェブサイト)

本記事は公表時点の情報をもとにしています。制度は改正されることがあり、個別の取り扱いは状況により異なります。実際のご判断は税理士等の専門家にご相談ください。

台東区・上野で相続のご相談は

今井税理士事務所(東京都台東区東上野)では、相続税や事業承継、生前対策のご相談を承っています。「借入や保証があるが放棄すべきか」「相続税がかかるのか不安」といった段階からでも大丈夫です。地域の事業者の皆さまが安心して次の一歩を踏み出せるよう、わかりやすくご説明します。まずはお気軽にお声がけください。

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