「人が採れない」を数字で見る——有効求人倍率のニュース
厚生労働省が、毎月の一般職業紹介状況を公表しています。これは、全国のハローワークに寄せられた求人や求職の状況をまとめたもので、ニュースなどでよく耳にする「有効求人倍率」の元になっている統計です。今回は令和8年5月分が公表されました。
「統計の話なんて、うちの商売には関係ない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、上野・台東区で飲食・小売・建設・サービス業などを営む経営者の方にとって、この数字は「採用のしやすさ」「人件費のこれから」を考えるヒントになります。今回は、その読み解き方と、自社で何ができるかを一緒に考えていきましょう。
有効求人倍率ってそもそも何?
有効求人倍率とは、ざっくり言うと「求職者1人あたり、何件の求人があるか」を示す数字です。
- 1倍より高い=求人のほうが多い(企業から見ると人が採りにくい状態)
- 1倍より低い=求職者のほうが多い(企業から見ると人を採りやすい状態)
つまり、この数字が高いほど「働き手の取り合い」が起きやすく、採用に苦労したり、給与・待遇を上げないと人が集まりにくくなったりする、ということです。
このニュースが台東区の経営者にどう関係するか
採用のしやすさが変わる
飲食店のホールスタッフ、小売の販売員、建設現場の職人さん——どの業種でも「人手が足りない」という声は絶えません。有効求人倍率が高い局面では、求人を出してもなかなか応募が来なかったり、採用までに時間がかかったりします。逆に数字が落ち着いてくれば、採用のチャンスが広がることもあります。
こうした世の中全体の流れを知っておくと、「うちだけが採れないのか」「いまは全体的に厳しい時期なのか」を冷静に判断できます。
人件費とお金の流れに直結する
人が採りにくい局面では、賃上げや待遇改善が必要になりがちです。これは経営にとって、毎月出ていくお金(固定費)が増えることを意味します。だからこそ、採用や賃上げを考えるときは、同時に資金繰りもセットで見ておくことが大切です。
上野エリアの飲食店オーナーから「人手不足でスタッフの時給を上げたいが、毎月の支払いが回るか不安」とご相談をいただくことがあります。賃上げ自体は前向きな投資ですが、銀行から見ると「人件費が増えても利益が確保できる計画か」が問われます。賃上げの前に、月々の資金繰り表を作って『増えた人件費を売上でどう吸収するか』を整理しておくと、金融機関とも話がしやすくなります。
具体的に、いま何をすればよいか
- 自社の人件費の割合を確認する——売上に対して人件費がどのくらいを占めているか(人件費率)を把握しましょう。これは財務分析の基本です。
- 採用計画と資金計画をセットで考える——「いつ・何人・いくらで」採るかを、お金の流れと一緒に検討します。
- 賃上げ・教育に使える支援策を確認する——国や自治体には、雇用や賃上げに関する助成金が用意されている場合があります。条件に合えば、人件費負担をやわらげる手段になります。
- 運転資金の備えを見直す——人件費が増える局面では、手元資金に余裕を持たせておくと安心です。必要に応じて資金調達の検討も視野に入れましょう。
賃上げに取り組んだ中小企業向けには、税制上の優遇(賃上げ促進税制など)が設けられている場合があります。要件や控除額は年度によって変わるため、「自社が対象になるか」「いくら税負担が軽くなるか」は、決算の前に一度確認しておくことをおすすめします。早めに分かれば、採用や賃上げの判断材料にもなります。
数字を「自社の経営判断」に活かす
有効求人倍率のような統計は、つい遠い話に感じてしまいます。ですが、「世の中の採用環境」→「自社の採用・人件費」→「お金の流れ」という順でつなげて考えると、ぐっと身近になります。
大切なのは、数字に振り回されるのではなく、自社の財務状況と照らし合わせて判断することです。人件費率や資金繰りを定期的に確認しておけば、採用も賃上げも、より自信を持って決断できます。
本記事は公表時点の情報をもとにしています。制度は改正されることがあり、個別の取り扱いは状況により異なります。実際のご判断は税理士等の専門家にご相談ください。
ご相談について
「人件費が増えても経営は大丈夫だろうか」「賃上げに使える税制や助成金はあるのか」——上野・台東区で事業を営むなかで、採用とお金の悩みは切り離せません。今井税理士事務所(東京都台東区東上野)では、財務分析や資金繰りの整理を通じて、経営者の方が落ち着いて判断できるようお手伝いしています。気になることがあれば、お気軽に声をかけてください。
出典
厚生労働省 一般職業紹介状況(令和8年5月分)について(2026年6月30日公表)
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