「最低賃金が毎年上がっていくけれど、これからどう決まっていくのだろう」——上野・台東区で事業をされている経営者の方から、こうしたお声をよくいただきます。人件費はお店や会社の経営に直結する大切なテーマです。今回は、最低賃金の決め方そのものを話し合う国の会議の動きと、経営者としての備え方についてお伝えします。
最低賃金はどうやって決まるのか
最低賃金とは、働く人に最低限支払わなければならない時給の下限です。都道府県ごとに金額が定められており、毎年見直しが行われます。
金額を決めるベースになるのが、国の「中央最低賃金審議会」が示す『目安』です。国がまず引き上げ額の目安を示し、それを参考に各都道府県の審議会が地域ごとの金額を決める流れになっています。
2026年6月19日、厚生労働省は「中央最低賃金審議会(目安制度の在り方に関する全員協議会)」の情報を公表しました。これは最低賃金そのものの金額を決める場ではなく、「目安をどのように示していくか」という制度のあり方を話し合う会議です。最低賃金の決め方の”土台”を議論する場、とイメージしていただくとわかりやすいかと思います。
中小企業の経営者にとって、なぜ重要なのか
「制度の議論」と聞くと、自分には遠い話に感じられるかもしれません。しかし、ここでの議論はこれからの最低賃金の決まり方に影響していく可能性があります。
飲食店・小売店・建設業・サービス業など、パート・アルバイトの方を雇っている事業所では、最低賃金が上がるたびに人件費が増加します。さらに、最低賃金ぎりぎりの時給で働く方が増えると、それより少し高い時給のベテランスタッフとの賃金バランスにも影響が波及します。「下の人の時給が上がったから、長く働いてくれている方の時給も見直さないと」——こうした連鎖が起きやすくなるのです。
最低賃金がどう決まっていくかという”土台の議論”は、将来の人件費を見通すうえで経営者にとって無関係ではないテーマです。
以前、台東区で小売店を営む経営者の方からこんな相談を受けました。「アルバイトを5人雇っているけど、最低賃金が上がったとき、毎月どれくらい追加で資金が必要になるのかわからない」というご相談です。
一緒に試算してみると、時給が50円上がると年間で数十万円の人件費増になることが判明し、その方は「こんなに違うのか」と驚いていました。逆に言えば、あらかじめ試算しておけば、いざ改定が発表されても慌てなくて済むのです。
人件費は毎月確実に発生する固定費に近い支出です。最低賃金の動向を追いながら、年間資金繰り計画に織り込んでおくことを強くおすすめしています。どう試算すればよいかわからない場合は、ぜひ一度ご相談ください。
経営者が今からできる4つの備え
現時点で、今回の会議によって金額や期限が変わったわけではありません。あわてて何かをする必要はありませんが、以下を整理しておくと安心です。
最低賃金に近い時給で働いている方が何人いるか把握しておきましょう。改定があったとき、誰の時給を見直す必要があるかがすぐにわかります。
最低賃金は例年秋ごろに新しい金額が適用されます。発表があったら、東京都の金額を必ず確認しましょう。
時給が上がった場合に月々・年間でどのくらい人件費が増えるかをざっくり試算しておくと、資金繰りの計画が立てやすくなります。
賃上げに取り組む中小企業向けに、国や自治体の助成金・補助金が用意されている場合があります。条件が合えば負担を和らげられることもありますので、情報をチェックしておきましょう。
② 賃上げと一緒に使える補助金・助成金を活用する
人件費の上昇を「コストだけ増える」と捉えるのではなく、補助金・助成金を組み合わせて経営強化のチャンスにするという視点も大切です。
たとえば、賃上げを実施した中小企業を対象とした助成金(業務改善助成金など)や、省力化・生産性向上を支援する補助金は毎年更新されます。また、事業計画書をしっかり作成することで採択率が上がるものも多く、専門家のサポートが有効です。
当事務所では、提携する株式会社ARATASと連携して、補助金申請のサポートを行っています。「どんな補助金が使えるかわからない」という段階からご相談いただけます。
③ 賃上げで資金繰りが不安なら、融資の選択肢も検討を
最低賃金の引き上げが続くなかで、「資金繰りが苦しくなりそう」「銀行から融資を断られた」というご相談も増えています。
賃上げによる資金ニーズは、銀行の融資審査においても「前向きな資金需要」として評価されやすい側面があります。ただし、決算書の見せ方や事業計画の数値根拠が審査の分かれ目になります。
銀行員時代、上野エリアで飲食業を営む経営者の方の融資審査に携わったことがあります。その方は「最低賃金が上がって毎月の支払いがきつくなってきた。運転資金を借りたい」とおっしゃっていました。
審査で重視したのは、賃上げ後の収支がどう変わるかを経営者自身が把握しているかでした。「何となく苦しい」ではなく、「時給が○円上がると月○万円増えるため、この時期に○万円の資金が必要」と説明できると、銀行の担当者は動きやすくなります。
銀行対策の基本は「数字で語ること」。決算書の整備と資金繰り表の準備が、融資の可否を大きく左右します。融資に不安がある方は、専門家に相談しながら準備を進めることをおすすめします。
① 顧問税理士に「人件費の相談」ができていますか?
最低賃金の引き上げや人件費の増加は、税務・会計の観点からも重要なテーマです。たとえば、賃上げを行った場合に使える税額控除(賃上げ促進税制)の活用、社会保険料の負担増への対応など、顧問税理士が積極的に提案してくれているかどうかが経営に大きく影響します。
「税理士に相談しても、申告書を作るだけで提案がない」「人件費が増えたときの対策を一緒に考えてほしいのに、なかなか動いてくれない」——そんな不満を感じているなら、税理士の変更を検討するタイミングかもしれません。
今井税理士事務所は「日本一しゃべりやすい税理士」をモットーに、上野・台東区の中小企業に寄り添った伴走型の支援を行っています。「適正納税」を軸に、節税・資金繰り・補助金活用まで、経営全体を一緒に考えます。
まとめ:今のうちに「人件費の見通し」を立てておこう
今回の中央最低賃金審議会の動きは、すぐに金額が変わるものではありません。しかし、最低賃金は毎年上昇傾向にあり、人件費の増加は中小企業にとって避けられないテーマです。
「うちの場合、賃上げが続くとどのくらい影響するのか」を今のうちに整理しておくことが、落ち着いた経営判断につながります。補助金の活用・融資の準備・税理士との連携——この3つを組み合わせることで、賃上げをピンチではなく、経営強化のきっかけにしていただきたいと思います。
厚生労働省「中央最低賃金審議会(目安制度の在り方に関する全員協議会)」(公表日:2026年6月19日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-tingin_127940.html
本記事は公表時点の情報をもとにしています。制度は改正されることがあり、個別の取り扱いは状況により異なります。実際のご判断は税理士等の専門家にご相談ください。
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- ✅ ① 顧問税理士を変えたい方——提案のある税理士に変更したい、申告だけじゃなく経営相談もしたい
- ✅ ② 補助金・助成金を使いたい方——賃上げに使える補助金を知りたい、採択のサポートをしてほしい(提携:株式会社ARATAS)
- ✅ ③ 融資・資金繰りに不安がある方——銀行対策を整えたい、融資を断られた、人件費増で資金繰りが心配
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