「最低賃金がまた上がるらしい」——毎年秋が近づくと、こうしたニュースが気になる経営者の方は多いのではないでしょうか。2026年6月26日、来年度(令和8年度)の最低賃金をどうするかを話し合う国の会議がスタートしました。本記事では、この最低賃金がどのように決まっていくのか、そして上野・台東区で事業を営む中小企業・個人事業主の皆さまにどう関わってくるのかを、税理士の視点でやさしく解説します。

どんなニュース?「中央最低賃金審議会」とは

2026年6月26日、厚生労働省から「令和8年度中央最低賃金審議会 目安に関する小委員会(第1回)」の資料が公表されました。

少しわかりにくい名前ですが、これは「次の年度の最低賃金をいくらにするか」を国レベルで話し合うための会議です。この中央の審議会で「これくらいを目安にしてはどうか」という方向性(目安)が示され、それをもとに各都道府県でそれぞれの地域の最低賃金が決まっていく、という流れになります。東京都の最低賃金も、この目安を踏まえて東京地方最低賃金審議会で審議されます。

今回はその議論の「第1回」、つまりスタート地点にあたります。まだ具体的な金額が決まったわけではなく、これから議論が進んでいく段階だとご理解ください。

上野・台東区の中小企業にどう関係する?

最低賃金は、「従業員に支払う給与の下限」を定めたものです。パート・アルバイトを含め、すべての労働者に適用されます。

台東区・上野エリアには、飲食店や小売店、建設業、サービス業など、人手を必要とする事業者の方が多くいらっしゃいます。最低賃金が上がると、次のような影響が考えられます。

  • パートやアルバイトの時給を引き上げる必要が出てくる
  • 人件費の総額が増え、利益や資金繰りに影響する
  • 最低賃金ぎりぎりで雇用している場合、改定後に下回らないか確認が必要

とくに、現在の時給が最低賃金に近い水準の従業員を雇っている場合は、改定のタイミングで時給の見直しが避けられません。「気づかないうちに最低賃金を下回っていた」という状態は法律違反になってしまうため、毎年の動きをチェックしておくことが大切です。

💡 税理士のワンポイント解説

以前、台東区で小売店を営む経営者の方から「時給は最低賃金より少し高くしているから大丈夫」というお話を伺ったのですが、賃金台帳を一緒に確認してみると、長く勤めているパートの方の時給が、直近の改定でほぼ最低賃金と同水準になっていた、ということがありました。ご本人にまったく悪気はなく、単に「数年前に設定した時給のまま」だっただけです。最低賃金はここ数年、毎年大きく引き上げられる傾向が続いており、「一度決めた時給」は放っておくと相対的に目減りしていきます。年に一度、全従業員の時給と最低賃金の差額を一覧にしておくだけで、うっかり違反のリスクも、改定時の人件費インパクトの見積もりも、ぐっと楽になります。

今からできる4つの準備

まだ金額が確定していない今の段階では、あわてて何かを決める必要はありません。ただ、これから秋以降にかけて議論が進み、最終的に各都道府県の最低賃金が決まっていきます。そこに向けて、今のうちにできる準備があります。

1
自社の従業員の「現在の時給」を把握しておく
パート・アルバイトを含め、それぞれの時給が今の最低賃金からどれくらい余裕があるかを確認しておきましょう。
2
改定があった場合の影響を試算しておく
もし時給を数十円引き上げた場合、月の人件費がいくら増えるのか、ざっくりでも計算しておくと、心の準備がしやすくなります。
3
国や自治体の支援策もチェックする
賃上げに取り組む中小企業向けには、助成金や税制上の支援が用意されている場合があります。負担をやわらげる制度を活用できることもありますので、情報を集めておくと安心です。
4
最新情報を継続して確認する
今後、厚生労働省や東京都労働局から正式な金額や適用開始日が発表されます。確定した情報をもとに対応を進めましょう。

賃上げの負担をやわらげる「補助金・助成金」という選択肢

「時給を上げたいのは山々だけれど、原資がない」——これは多くの経営者に共通する悩みです。国や自治体には、賃上げや生産性向上に取り組む中小企業を後押しする助成金補助金の制度が設けられていることがあり、設備投資と賃上げをセットで支援するタイプの制度も見られます。

ただし、こうした制度は申請の要件や時期が細かく決まっており、「賃上げした後では申請できない」ケースもある点に注意が必要です。補助金の申請には事業計画書の作成が求められることも多く、日々の営業と並行して準備するのはなかなか大変です。当事務所では、補助金・融資支援を行う株式会社ARATASと提携し、制度の選定から事業計画書の作成、採択後の会計処理までを一貫してサポートしています。「うちが使える制度があるのか知りたい」という段階のご相談も歓迎です。

人件費の増加は「資金繰り」と「銀行対策」の問題でもある

人件費は、売上が増えても減っても毎月必ず出ていく固定的な支出です。最低賃金の引き上げで人件費が増えると、手元資金の減りが早くなり、資金繰りに余裕がなくなっていきます。状況によっては、運転資金の融資を検討したり、返済計画を見直したりする判断も必要になります。

🏦 元銀行員のワンポイント解説

銀行員時代、清掃サービス業を営む社長から運転資金の融資のご相談を受けた際、「人件費が増えて資金が厳しくなってきたので貸してほしい」という説明だけでは、審査の場でなかなか前向きな評価につながらない場面がありました。一方で、同じような状況でも、資金繰り表を作って「最低賃金の改定で人件費が月いくら増える見込みか」「その分をどう吸収する計画か」を数字で示せた会社は、銀行側も安心して支援を検討できたのです。ポイントは、資金が苦しくなってから相談するのではなく、人件費増加が見えた時点で先に数字をまとめて銀行に共有すること。これだけで銀行の受け止め方は大きく変わります。決算書や資金繰り表の整え方に不安がある方は、早めに専門家を頼ることをおすすめします。

「顧問税理士から何の提案もない」と感じたら

最低賃金の改定は毎年ほぼ確実に行われるものです。だからこそ、本来は顧問税理士の側から「来年度は人件費がこれくらい増えそうです」「この助成金が使えるかもしれません」といった声かけがあってよいテーマです。もし今、「記帳と申告だけで、提案がない」「相談しても物足りない」と感じているなら、税理士の変更を検討するタイミングかもしれません。当事務所は「日本一しゃべりやすい税理士」を掲げ、数字の報告だけで終わらない伴走型の顧問対応を大切にしています。

あわてず、でも備えはしっかりと

最低賃金の改定は、毎年ほぼ確実に行われるものです。だからこそ、「決まってから慌てる」のではなく、早めに自社の状況を把握しておくことが、安定した経営につながります。

人件費の増加は経営にとって悩ましいテーマですが、賃上げに伴う支援制度をうまく活用したり、資金繰りを前もって見直したりすることで、無理のない対応ができる場合もあります。

出典:厚生労働省「令和8年度中央最低賃金審議会 目安に関する小委員会(第1回)資料」(2026年6月26日公表)

本記事は公表時点の情報をもとにしています。制度は改正されることがあり、個別の取り扱いは状況により異なります。実際のご判断は税理士等の専門家にご相談ください。

上野・台東区の中小企業経営者の皆さまへ|今井税理士事務所へのご相談

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補助金申請や融資・銀行対応は、提携先の株式会社ARATASとともにサポートいたします。上野・台東区エリアの中小企業・個人事業主の皆さまの実情に合わせて、人件費と資金繰りの見通しづくりに伴走いたします。

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